環境や人材に対する 長期的視野でのアプローチで、永続企業に不可欠な 強固な経営基盤を構築します。取締役 管理本部長 稲生 篤彦

人材の育成について

 当社グループが300年企業を目指す上で、もっとも大切な資本となるのが人材です。優秀な人材を育て、活かすために、私たちは①社員が楽しく働ける企業風土の醸成、②人材育成の強化、③ダイバーシティの実現を重視して様々な取り組みを進めています。

 社員が楽しく働ける企業風土の醸成については、最も大切なことは、組織内の誰もが自分の考えや気持ちを安心して発言できる状態である心理的安全性を、社員全員が保持していることであると考えています。そのためには、上司と部下が互いに尊重しあい、気軽に話しかけられる雰囲気づくりや、「出る杭を伸ばす」志向などを、企業風土としてさらに定着させられるよう取り組みます。これらの取り組みに対するエンゲージメント調査も定期的に実施し、その成果を測定することにも努めます。

 人材育成の強化に向けては、グループ全体で職種別研修や年次別研修制度を構築して人材教育を統一することで、グループ全社員の能力開発を拡充できるよう取り組みます。新たにグループに加わったJES総合研究所(株)との連携も進めます。JES総合研究所(株)は、人事コンサルティングや研修等を中心とした事業を展開する会社として2024年2月1日設立したばかりの会社です。ダイバーシティの実現に向けては、人々の多様性を認め、障がい者雇用の拡充や、女性管理職比率の向上など女性活躍の推進、多様な働き方を認める雇用形態などを推進しています。

 このほか、エンジニアが担当する事業セグメントにとらわれず、スキルに応じて柔軟に活躍できる「エンジニアエコシステム」の実現に向けた取り組みも進んでいます。例えば公共サービス事業における公営競技のトータリゼータシステム保守業務と、交通インフラ事業におけるエンジニアリング業務では、電気通信技術を必要とするという点が共通しており、すでに一定のエンジニアエコシステムが実現しています。今後はこうした事例を、当社グループのあらゆる事業、あらゆる範囲において推進していきます。そのために、各事業セグメントにおいて、階層別に求める人材像を明確にし、共通する資格やスキルを明文化するなどの取り組みを進めます。また、JES総合研究所(株)とも協力し、グループ一丸となってエンジニアエコシステムを実現できるよう努めます。

M&A戦略について

 今後のM&A戦略に関しては、3か年30億〜50億円をM&A戦略投資枠として予定しています。その財源については、基本的には毎期獲得される営業キャッシュフローと借入金を予定していますが、その他の資金調達手段として2023年9月期に発行した新株予約権の行使も手段の一つです。営業キャッシュフローは毎年約7億〜8億円発生しており、設備投資による資金需要も勘案した上で、M&Aへの投資資金に充当するというのが基本的なスタンスです。有利子負債比率を過度に高めないよう意識した上で、必要に応じたデットファイナンスを活用しています。なお、2024年10月には、本社機能を有する賃貸ビル建設を予定しており、これに伴う資金需要が発生する見込みです。主な資金調達手段はデットファイナンスとなるため、特に有利子負債比率を過度に高めないよう注視する必要があると考えています。

 M&Aを実行する上での投資判断基準としては、事業面と人材面、収益性、ネットデット(純有利子負債)などを重視し、総合的に判断しています。事業面では、当社事業との親和性や、シナジー効果がどの程度見込まれるか、などの観点を重視しています。人材面ではキーパーソンとの相性や従業員の資格・スキル・マネジメント力などの実務経験が充実しているか、収益性では将来的にも収益力を伸ばす見込みのある事業であるか、ネットデットが高い会社でないか、などという点などを重視します。この他にも、地域活性化の観点から、様々な地域で活躍している企業を対象にしたいと考えています。それぞれの地域で当社グループへのメンバーを増やすことで、エンジニアエコシステムの拡充にもつながると考えています。

IR活動、配当政策、株主還元の方針について

 当社は、2023年9月末時点で、流通株式時価総額および流通株式比率が東証スタンダード市場の上場維持基準を満たすことができなかったことから、2023年12月27日付けで「上場維持基準適合に向けた計画に基づく進捗状況について」を適時開示させていただきました。当面は、ここに提示した内容、すなわち中期経営計画推進による業績向上、IR活動の推進・強化、株主還元の実施といった施策を着実に実行することが最優先の課題であると認識しています。

 IR活動の推進・強化については、この統合報告書2024の公表に加え、個人投資家向け説明会を半期に1度開催する予定であるほか、SNSを活用した情報開示も推進します。株主還元に関しては、安定配当と増配を意識した配当政策を引き続き実施します。また、2023年9月期に実施した創業25周年記念株主優待の実績を踏まえ、2024年1月に新たに株主優待制度を新設しました。当社を応援してくださっている株主の皆様への感謝を示す施策と捉えていただければ幸いです。

 今後も株主の皆様だけでなく、地域社会や従業員、お取引先様との対話を重ねながら、300年企業を目指してグループ一丸となって進んでまいります。